従業員が睡眠障害になった場合、企業は悪化する前に対策をとる必要があります。しかし、そのようになる前に日ごろから対策をしておくことも重要です。睡眠障害には代表的な不眠症以外にも、多くの症状があります。不眠症以外にも睡眠障害があることを理解し、従業員に当てはまる方はいないかチェックするとよいでしょう。本記事では、企業での睡眠改善が進まない理由、そして睡眠障害の種類をご紹介します。
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従業員へ睡眠改善が進まない理由
従業員の睡眠障害の改善は、経営にとても重要な要素です。なぜなら、従業員の体調不良が巡り巡って自社の経営に大きな影響を与えるためです。しかし、不眠症などを含めた睡眠障害への改善は、近年、企業側も重要な要素であると理解されつつも、なかなか踏み出せなかったり、改善につながらないケースが多いのではないでしょうか。理由は、いくつか考えられます。
①睡眠は個人による体調管理のため
②正しいリテラシーが企業内に浸透していない
③企業側が対策方法をわかっていない
④睡眠障害の課題をもっていると申告する人や自覚する人も少ない
⑤どこからが睡眠障害か線引きが難しい
⑥睡眠障害をもつ従業員がいたとしても、相談先がわからない
⑦睡眠障害への企業の体制が整っておらず、対策が打てていない
などがあげられます。まずは、睡眠のことを理解するためにも、日ごろから個人と企業がともに睡眠障害に対して正しい知識を学ぶ機会を作りましょう。万が一、睡眠障害の従業員がいる場合は、病院などに受診勧奨するようにしましょう。こちらの記事で相談先もまとめていますので確認してみましょう。
不眠症だけじゃない 睡眠障害には多くの種類がある
睡眠障害には種類がたくさんあります。睡眠障害というと多くの人が代表的な不眠症をイメージするのではないでしょうか。しかし、不眠症以外にも多くの病気が睡眠障害にはあります。ここでは睡眠障害の種類をご紹介しますが、ほかにもたくさん種類があるため、一例としてご紹介します。睡眠障害の可能性がある従業員に対しては、不眠症以外でも悩んでいる可能性も考慮して、症状を聞き、症状により受診勧奨や産業医などの相談窓口を紹介していきましょう。
【不眠症】
まず、日本人が特に多い不眠症です。不眠症には、「入眠困難」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟睡障害」の4種類に分類されています。入眠困難は、布団に入ってから寝るまでに時間がかかることです。15分以内がよいとされていますが、入眠困難の場合、30分~1時間以上入眠までに時間がかかる症状で、翌朝を迎えてしまうケースもあります。中途覚醒は、入眠後、翌朝起きるまでの間に何度も目が覚めてしまう症状です。早朝覚醒は、通常の起床予定時刻の2時間以上前に起きてしまい、その後再入眠できない症状です。熟睡障害は、起きた時に睡眠不足を感じる状態で熟眠できた満足感がない症状です。不眠症は慢性化するとうつ病や精神疾患などにつながります。
【過眠症】
睡眠発作とも呼ばれる過眠症の一つのナルコレプシーは、夜十分に睡眠をとっているにも関わらず、日中の眠気が強く、突然眠気に襲われ、本来眠ることのない状況、例えば会議中や商談中などに居眠りしてしまい、日常生活に支障をきたす症状です。また、不眠症とは逆に、7時間睡眠の人より寝すぎると死亡率も1.7~1.8倍近くリスクが高くなるといわれています。(参照元:国立がん研究センターがん対策研究所)
【睡眠呼吸障害】
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と呼ばれる睡眠呼吸障害は、睡眠時に呼吸が止まる症状です。身体が酸欠状態になるため睡眠が中断し深い睡眠をとることができなくなり、慢性化した睡眠不足になり、昼間の眠気が出現します。また、酸欠状態により、高血圧や動脈硬化、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病など生活習慣病が引き起こされる可能性があります。放置すると、「中等症以上の睡眠時無呼吸症候群を8年間放置すると死亡率が約37%(8年で100人中37人が死亡するということ)にもなるという報告」(※)もあり、早期治療が大切です。(※引用:睡眠時無呼吸症候群(SAS)|品川区新馬場|「みやざきRCクリニック」)
【概日リズム睡眠覚醒障害】
概日リズム睡眠覚醒障害に含まれる睡眠相後退症候群は、昼夜が逆転する症状です。一般的な社会生活において適切な時刻に眠ることや起きることが慢性的に困難であり、夜中の3時から6時に眠くなり、午前11時から午後14時付近に起きます。夕方から夜にかけて活動的になる症状です。
【睡眠関連運動障害】
睡眠関連運動障害の中に、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)というものがあります。主に脚に不快な感覚、虫が這うようなむずむずする感覚があらわれる症状です。座っているときに、脚の内側から不快感を感じますが、基本的には脚を動かすことで和らぐとされています。 睡眠時にもこの脚の不快感が起きるため、睡眠不足になる傾向にあります。
【睡眠時随伴症】
睡眠中におきる異常行動の総称です。はぎりしりや寝言、悪夢、夜驚、幻覚、夜尿、夢遊病などが含まれます。
あくびは病気も疑うこと
睡眠不足のサインでもあるあくびは、睡眠障害になる前のひとつの兆候といえます。しかし、あくびは睡眠障害とは別に重篤な病気につながることもあります。従業員が日中あくびや、眠たそうにしている従業員を社内で見かけることがあります。しかし、ほとんどの上司は、部下のそのような行動に気づいたとしても、大抵前日の夜更かしを考え、原因をさほど気に留めないのではないでしょうか。しかし、これらの行動は夜更かし以外にも、病気の可能性があることを忘れてはなりません。眠くないときのあくびは「生あくび」ともいわれ、緊張してるときやぼーっとしている時などに出ることがあり、酸素不足や、脳の温度調整や活性化などを行うためといわれています。
しかし、体を目覚めさせる一つのサインであると同時に、病気の予見としてもおなじようになまあくびがでることがあり、脳梗塞や脳腫瘍、貧血などの症状が当てはまります。あくびを頻繁にみかけるような場合や、改善の兆候が見られない場合は、病気を疑う必要もあります。本人との面談などを通して病気かどうかを確認することをおすすめします。
(参照元:スマート脳ドック 生あくびが病気のサインであることも? 眠くもないのに頻繁に出るあくびに注意!)
日ごろから睡眠に意識を持つことが大切
従業員も企業も、睡眠障害に対して日ごろから改善意識を持つことが大切です。ダイエットや筋トレなどと比べ目で見える効果がわかりにくく、後回しにされるケースが多いように感じます。しかし、体はなにをするうえでも必要な資本といえます。意識をもち睡眠投資をすることで、改善だけでなく、早期に睡眠障害に気づく可能性も高まります。睡眠障害にならないよう、日ごろから気を付けていきましょう。